遺言書がある場合とない場合では、手続きが全く違います
ご相続のまず最初は、遺言書があるかどうかの確認から

遺言書がある場合
遺言書とは亡くなった人が、自己の財産について、誰にどのように残すか最終意思表示したものです。自己の財産を誰に残すか決めたいということは当然のことですし、自分の意思を残すことで、残された相続人同士が、無用な争いや、煩わしい遺産分割協議を、無くしたいと考えることも当然です。
そして遺言書がある場合は、遺言者の意思に従い、遺言書のとおりに相続手続きを進めることになりますので、相続人全員で集まり話し合って作成する、遺産分割協議書の作成が不要となります。
遺言書がない場合
遺言書がない場合は、相続財産の分割について相続人全員で話し合い、遺産分割協議書を作成し、その遺産分割協議書で相続手続きを進めることになります。
遺産分割協議書の作成は、相続人全員の合意が必要で、相続人の中に行方不明者、判断能力不充分者、未成年者、海外居住者、などの方がいらっしゃると、所定の手続きが必要となり時間がかかり、争いがなくても遺産分割協議書作成が困難になる場合があります。
遺言書のある・なしの確認方法
□自宅を確認
自筆証書遺言を自宅で保管している場合は、自力で探すしかありませんが、多くの場合では、すぐ発見してもらえるところから見つかります。自筆遺言を発見した場合は、勝手には開封することは違法行為となりますので要注意です。必ず家庭裁判所に連絡し、家庭裁判所で相続人立合いの元で開封してもらう必要があります。
□法務局を確認
法務局の遺言書保管制度を利用し保管している場合は、法務局に申請すれば遺言書の有り無しの確認を、全国どこの法務局からでもできます。また、遺言者の指定により、法務局が遺言者の死亡を確認した場合は相続人に通知がいく制度もあります。(※1)
□公証役場を確認
公正証書遺言を作成している場合は、公証役場で確認できます。平成元年以降に作成したものは、どこの公証役場でも確認できますが、平成元年以前に作成したものは、作成した公証役場のみ確認できます。
□銀行・弁護士等その他確認
銀行や弁護士・司法書士・税理士・司法書士・行政書士が遺言者の依頼を受け保管していることもあります。
(※1)自筆証書保管法準則19条(通知に関する申出)の記録をした場合において、遺言書保管官は、遺言者の死亡の事実を確認したときは、その申請に係る遺言書を保管している旨を当該遺言者が指定した者に通知するとされています(準則35条)。
法務局による自筆証書遺言保管制度においては、法務局が市区町村の戸籍部署と連携しているため、遺言者が通知先を指定しておくことにより、遺言者の死亡の際に遺言書保管官から(遺言者が指定していた)通知先に対して、遺言書保管の事実を通知することができます。そうすることにより相続人らの関係者は、遺言書の内容を知る機会が確保され、遺言内容が実現されることになります。
法務局による自筆証書遺言補完制度について

遺言書の保管制度の場合は、自分で遺言書を作成します。
しかし、法務局は、遺言の内容についてはアドバイスをしてくれません。例え、法務局の方が、持ってきた遺言を見て、「遺産が偏り過ぎててトラブルになりそうだな」とか「遺留分の請求がされそうだな」と思っていても、そのことは指摘してもらえません。法務局が確認するのは、あくまでも自筆証書遺言の形式が法的に有効になっているかのみ審査します。つまり「本文はすべて手書きか」「署名、捺印があるか」「日付が記載されているか」です。
法務局に預けたからトラブルにならない遺言ができるというわけではありませんので、その点はご注意ください。
法務局における自筆証書遺言書保管制度は、公正証書遺言に比べて安い費用で遺言書を保管してもらえるため、相続トラブルを避けるために有用な制度のひとつです。
もっとも、法務局は遺言書の内容まではチェックしませんので、遺言書の作成自体については自己責任になるため、トラブルの起こりにくい遺言にするために、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをご検討いただけると幸いです。
なお、公正証書遺言の場合は、公証役場において、公証人に遺言の内容を口頭で伝え、公証人がそれを文書にします。証人の立会の上、公証人が作成するので、主旨の不明などを理由に無効になる恐れがありません。
遺言書は形式が決まっていますので、形式ミスで無効になってしまわないよう、作成する際は細心の注意を払う必要があります。その他、上記のような遺言書保管制度のメリット、デメリットがありますので、ご自身の状況に合わせて、適切な手段を選択するとよいでしょう。
遺言をお考えの方、遺言書保管制度の利用をお考えの方、何かお困りごとがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。