認知症の祖父が所有の不動産
祖父の介護費用捻出のため売りたいのですが・・・

介護費用の捻出は家族、親族にとって重要な問題です。幸い財産をお持ちだった場合でも、それが認知症となられた要介護者ご本人の名義だった場合はどうしたらいいでしょうか。認知症の進み具合にもよりますが、一般的な流れをご紹介します。
成年後見制度を利用する
認知症の進み具合によりますが、御祖父様が、不動産の売買契約のことや、財産管理のことを、理解し、意思を伝える、という能力が衰えてしまっている場合、御祖父様は、ご自身では売買の手続を遂行できません。その場合は、成年後見制度を利用し、売買手続を代理したり、同意したりする人(成年後見人等)を家庭裁判所に選任してもらう必要があります。
成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害のような、ひとりで決めることに不安のある方々を法的に保護し、ご本人の意思を尊重した支援(意思決定支援)を行い、共に考え、地域全体で明るい未来を築いていく、という目的を持った制度です。
この制度を利用して不動産を売却するときの流れをざっくりとご紹介します。
成年後見制度を利用した不動産売却の流れ
〇家庭裁判所に申し立てを行う
事前に必要な書類や費用を準備し、御祖父様ご本人の住所地を管轄する家庭裁判所に成年後見制度開始の審判の申し立てを行います。申し立てを行う人は、本人のほかに配偶者、四親等内の親族、検察官なども可能です。
〇家庭裁判所が審理を行う
申し立て後は、家庭裁判所によって、成年後見制度を利用してよいかどうかの審理を行います。この際、裁判所の職員が本人や後見人候補者、申立人にヒアリングをし、必要と判断された場合には医師が本人の意思能力を鑑定します。
〇成年後見人が選ばれる
家庭裁判所が成年後見人に最も適した人を選任します。選任までは、申し立てから2か月ほどかかることが一般的です。場合によっては親族でなく、司法書士や弁護士などが法定後見人に選ばれることもあります。
〇査定を受け、媒介契約を結ぶ
成年後見人が選ばれた後の流れは、通常の不動産売却と同様です。まずは査定を受け、その後信頼できる不動産会社と媒介契約を結びます。信頼できる不動産会社は、担当者の対応が親切か、査定額に対する根拠が明確かなどを見て選ぶようにするのがおすすめです。
〇居住用不動産の場合は家庭裁判所の許可を得る
売却する不動産が御祖父様ご本人の居住用不動産の場合は、家庭裁判所の許可を得る必要があります。許可を受けずに売買契約を結んだ場合は無効となるので、注意してください。
なお、非居住用の不動産を売却する際は、家庭裁判所の許可は不要ですが、医療費や施設入居費の確保といった正当な理由が必要になります。
〇売買契約を結ぶ
家庭裁判所の許可が下りたら、成年後見人が本人の代理として買主と売買契約を結びます。
〇代金決済・引渡しを行う
引渡し当日は、代金の支払いや残代金受領・固定資産税などの清算を行い、登記申請の手続きをします。引渡しと代金決済は同日に行われることが多く、買主に物件引渡しを行ったら売却は終了です。
成年後見制度の利用のご相談は専門家へ
上記でご紹介してきたように、認知症の御祖父様や親が所有する不動産を売却したい場合、売却方法は認知症の進行具合によって限られます。重度の認知症で意思能力がないと見なされた場合には、成年後見制度を利用する必要があります。
成年後見制度の利用は、用意しなければならない必要書類が多く、専門的な知識が必要とされる場面が多々あります。おひとりで悩まずに、専門家に相談するのがおすすめです。
当事務所ではご相談を無料で承っております。お気軽にご連絡くださいね。